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April 16 魂が還るところみなさま、戻りました。 宮崎、楽しかったですぅ~。 高千穂神社で身を清め、天照大神ゆかりの神社や、神々が集まって天照大神を岩戸から出す相談をしたという天安河原などを訪ね、神話にどっぷりつかって参りました。 高千穂神社と天安河原では、オーブたちにも会えました。オーブとは、自然の精霊だそうです。「もののけ姫」に出てきた木霊です。あれです。あれ。 すごく、かわいいんです。子供みたいなエネルギーです。愛がいっぱい! 「みんな、遊んで、遊んで、楽しめばいいんだよ。自分をいつも歓ばせていればいいんだよ。そうすれば、神様も歓ぶんだよ」って、うれしいメッセージをくれました。 そして、夜神楽。高千穂に限らずこの辺りでは、冬になると夜通し民家や神社で神楽を舞って楽しむんですね。高千穂神社では、毎晩、観光で来た人のために神楽を舞ってくれるんです。神楽の中には天照大神の神話を題材にしたものから、くるくる回ってトランス状態になって神様を降ろすもの、農作物の豊作を感謝するもの、などなど、いろいろあるようですが、高千穂神社で見たのは神話を題材にしたものでした。 そして、椎葉村。 どうやら、私の先祖がそこの出身らしいということでルーツ探しをしてきました。そう、私の先祖は平家の落ち武者だったのでした。今でも父の実家の菊池家では、鯉のぼりを上げません。家紋がわかって源氏に討たれてしまうからですね。悲しい歴史があったのです。そして、椎葉村に一番多い椎葉家のお墓に彫ってあった家紋は、まさに、菊池家の家紋と同じだったのでした。 椎葉家とは、平家のことなのです。壇ノ浦の戦いで破れた平家は宮崎のこの地まで流れてきて、苗字をすべて椎葉に変え、農耕をしながらひっそりと暮らしていたのですね。そこへ、源頼朝に命を受けた那須大八郎が栃木から平家の征伐にやってきた。 ところが、大八郎は優しい人で、ひっそりと暮らしていた平家の人たちを見て不憫に思い、殺さずに一緒に畑なんかやって暮らしていた。平家のお姫様、鶴富姫とも出会って恋に落ちたりして、ラブラブで暮らしていたわけです。 あっという間に3年が経ち、大八郎は頼朝に「帰って来い」と言われました。しぶしぶ、大八郎は帰ることに。そのとき鶴富姫のお腹には赤ちゃんがいたので、「男子なら自分のところに寄こせ。女子なら、この地で育てよ」と言って、椎葉村を泣く泣く去ったのでした。その後、鶴富姫が生んだ女の子が養子を取って那須家となり椎葉村を治めました。 一方、大八郎は、頼朝に呼び寄せられたあと、「平家を殺してこなかった罰」として打ち首になったのではないかという話を聞きました。哀れ、大八郎。惚れた女と引き離されて、そのうえ打ち首かい!って突っ込みたくなりますね。 昔は、こんな理不尽な話、たくさん、ありましたもんね。 でも、今は21世紀です。誰もが好きな人を好きでいていい時代だし、誰もが好きな仕事を楽しんでいい時代です! 「よ~し、一旗上げるぞ。待っててください、ご先祖様!」と、私も一念発起。おそらくは、先祖が毎日お参りしていたであろう神社に参拝してまいりました。そしたら、ものすごく勇ましい立派な鎧兜に身を包んだ、超イケメンの男性のヴィジョンが見えました。ご先祖様、ハンサム!惚れました 私は、無宗教です。というか、なんでもあり、の人なんです。 椎葉村でも、神棚と仏壇がおんなじお部屋にありました。そして、お坊さんの娘が神道のおうちにお嫁に行ったり、お坊さんのおうちのお嫁さんがキリスト教になったり・・・なんて話も、聞きました。なんでもありです。 「いいっちゃ、いいっちゃ、死んだらみんな、行くところは、おなじだっちゃ」と言って豪快に笑うお祖父さんの話も聞きました。そういう人、大好きです みんな、来たところも帰るところも、いっしょです。この世にいる間だけですよね、あの人と私はちがう、あっちとこっちは違う・・・とか、言ってるのは。。。死んだら、みんな、「あれ?死んだらおんなじだったぁ~」ってわかると思います。もっとも、生きてるうちにわかるのが、一番いいんですけどね 椎葉村は、食べ物も美味しかったです。山女の刺身、唐揚、塩焼き、鱒の甘露煮、自家製胡麻豆腐、たらのめ、ふきのとう、ゆきのしたの天婦羅。え~と、あとは、あとは。。。。ごめんなさい。たくさんありすぎて覚えていません。 ちなみに、鶴富姫の末裔、那須家は現在まで32代続いていて、旅館をしています。私はその旅館に泊まり、鶴富姫の子孫がずっと住んでいたという江戸時代のお屋敷で美味しいごはんをいただきました。 ほんっとに、もう、LOVE 宮崎 です 空も山も川も森も渓流も。 どこもかしこも、おおきくて、やさしかった。 また、行きたいです。
February 06 愛するということセドナの旅は、ほんとうに不思議な旅だった。今週、ずっとセドナの旅のことを書いてきて、あらためて思う。 特に、イメージのなかで夫に会って話をし、彼を手放したことは、私にとって一番つらいレッスンだったし、最も大切なレッスンでもあった。 私にとって「愛する」ことは「しがみつく」ことと同じだった。彼を愛していると思い、彼は弱いのだから保護するのだと思い、私は彼のすべてに注意を注ぎ、彼の病気さえも治せるのだと思っていた。なんという傲慢さ。なんという勘違いだろう。彼の道を私が代わりに歩むことはできないというのに、私は彼の人生さえも所有しようとしていたのだった。 彼は誰にも所有されたことはないし、これからもそうだろう。それは私も同じことだ。私は誰にも所有されないし、誰も私を所有することはできない。 私はセドナで、「愛する」とはその人を手放し、その人の行く道を見守ることなのだと知った。自分がその人にどうなってほしいか、その人にどうしてほしいか、は愛ではない。それは、執着であり欲なのだ。「愛しているから」「心配しているから」という言葉で誰かを支配しようとしたり、変えようとしたりすることは、愛ではなく、欲なのだ。 愛する人の魂がいつも悦びに満たされていますように。 自分の執着も我欲も捨て去り、ただ、愛する人のためにそう祈ることが愛なのだと、私はセドナで知ったのだった。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 次回は、セドナの旅のクライマックス。ネイティブ・アメリカンの魂の浄化の儀式である「スエットロッジ」について書きます。
光のなかへ~セドナの旅 12私は岩の上に座ったまま、両手を合わせて泣きじゃくっていた。 白い光が消えてしまうと、いっそう淋しく、悲しいのだった。 彼は光に返ってしまった。本当に、本当に、二度と会えないのだ。 あまりに泣きじゃくっているので、ラヘリオがまた歌を唄い、ヒロさんが肩を抱いていてくれた。みっちゃんは、やさしく私を見守っていてくれた。みんなが、私を支えてくれていた。みんなの愛がうれしかった。 「ずいぶん、たくさん感情を解放したね」やっと涙がおさまると、ラヘリオが私に言った。 「亡くなった主人に会って、彼は行かなくちゃいけないというので、いやだし、悲しかったけれど、彼を手放したんです」 そう言うと、また涙が出た。ほんとうに、どれだけたくさん泣いたことか。ラヘリオは私をしっかり抱きしめてくれた。ラヘリオから感じたのは、父の愛だった。傷ついた娘を思うような聖なる愛だった。 「最初に見た動物を覚えている?」ラヘリオが尋ねた。 「リスと青い鳥」 「リスは、木の実をたくさん集めて自分を養うよね。だから、リスが出てきたということは、自分をいたわり、養い、育んであげなさいという意味。そして、青い鳥は幸運のしるし。これからは、幸福が訪れるよ」 ラヘリオは優しく微笑んだ。 それから車に乗り、ラヘリオは私たちを夕日がよく見える場所へ連れて行ってくれた。車の窓から、夕日でオレンジ色に染まった岩山が見える。 「ありがとう-!」私は車の窓から叫んだ。誰になのか、何になのかは、わからない。とにかく、感謝したくてたまらなかった。 夕日が見える場所に着き、私たちは山の向こうに沈む夕日を眺めた。雲がピンク色に染まっている。今まで見たことがないダイナミックな夕焼けだった。夕日がゆっくりと沈んでいく。私は夕日に向かって手を合わせ、感謝を送った。 「きれいだね」 誰ともなく、空に向かってつぶやくと、 「だろう?僕はこんな素晴らしいところに住んでるんだよ」と、夫が笑ったような気がした。 それから、私たちは来た道を戻り、出会えたことに感謝し、抱き合って、ラヘリオと別れた。ラヘリオは私を抱きしめたときに、両手を背中に回し、ちょうど胸の裏にあたるところを、上から下へと何度も撫でてくれた。 「ここはハートのチャクラの後ろだから、ここをさすると壊れたハートが楽になるよ」 すると、本当に胸が楽になった。痛くてずきずきしていたのに、本当に痛みが消えたのだった。 本当に私は彼を手放したのだ。彼は光になった。次に生まれ変わる準備をしに、光へ帰った。今度こそ、これでお別れだ。お互いにこれからは別々だけれど、彼が生まれ変わって幸せな人生を歩むことを選んだのだと知って、本当に楽になった。 私は、これで本当にひとりだ。でも、大丈夫。ひとりでも、たくさんの人とつながっているから。きっと、たくさんの人が支えてくれるから。そして、私もたくさんの人を助けられるようになりたいから。 ありがとう、だんなさん。 私は空に向かって、感謝を捧げた。
--------------------------------------------- セドナの旅についてもっと知りたい方は、こちら↓ February 05 光のなかへ~セドナの旅 11「はなしておくれよ」 彼がそう言った気がした。まるで、楔が打ち込まれたように、胸が痛んだ。彼は悲しげに笑ったまま、立ち上がり、背中を向けて立ち去ろうとする。私は彼の手をつかんで離さずに、彼を引き止めた。 わかっている。もう、彼を手放さなくてはいけない。彼を光に返さなければならない。わかっているけれども、私はつかんだ手を離すことができなかった。泣き続けて、胸がひどく痛くなるばかりで、どうしても手を離すことができない。 私はしばらく泣いていた。気がつくと、岩の上で本当にぎっちりと、手のひらに爪が食い込むくらいきつく両手を握り締めていた。 「手放しなさい。もう、彼を行かせるんだよ。胸が痛い。悲しいし、さびしい。いやだよね。でも、彼のために行かせなければならないんだよ。ずっと、しがみついているわけにはいかないんだ。わかるよね」 私は、いやがって駄々をこねる自分に言い聞かせた。そして、ゆっくりと、両手を開いたのだった。 両手を開くと、彼はうれしそうに笑って、洞窟の向こうに去って行った。ありがとう、と言っていたかもしれない。とても、ほっとしたような笑顔だった。 私は岩の上にあおむけになったまま、両手を大きく広げたまま、泣きじゃくった。悲しい。さびしい。もう二度と彼には会えない。もう二度と彼を抱きしめることもできない。身体が震えた。胸がえぐられたように痛かった。 チベタンベルの音が響いた。ラヘリオが鳴らしてくれているのだ。ベルは静かに鳴り続けた。ベルの音が止む頃に、私も落ち着き、涙が引いた。 「さあ、もどってきなさい」ラヘリオの声が響いた。完全に意識を戻し、あおむけになったまま目を開けると、空中に白い光が回っているのが見えた。なんだろう?じっと光を見つめた。手裏剣のような形をしている。透き通るような白い光で、左回りにものすごい形で回っていた。シュルシュルと音が聞こえてきそうだった。 「彼だ」 直感的にそう思った。あれは、彼の魂だと。すると、白い光は回りながら青空に向かって上って行った。そして、ぽわんと弾けて白い雲になった。 「これで、本当にひとりだ」 起き上がると、そう思ってまた涙が出た。 「ありがとう、ありがとう」 私は雲を見上げて彼に言った。それでも、これが本当の別れだと思うと涙が止まらなかった。 「たくさんの人が助けてくれたね」 白い雲になった彼は、そう言って、笑いながら消えてしまったのだった。(つづく)
--------------------------------------------- セドナの旅って、なに?詳細はこちら↓ http://www.ubatech.com/inner_trip/03-1.htm
February 04 光のなかへ~セドナの旅 10「やだ、元気だったの?どうしてたの?大丈夫だったの?」 イメージのなかで、私は夫の両手をつかんで叫んでいた。夫は、にこにこ笑っている。 「元気だよ。ごめんね、驚かせて」夫が言った。突然、死んでしまったことを言っているのだった。 「そうだよ、びっくりしたよ」私は夫を抱きしめた。なつかしい。会いたかった。ちゃんと話すことができずに逝ってしまったから、話したいことがたくさんあった。心残りで、どうしても、私はもう一度、彼に会いたいと思っていたのだった。 彼はそっと私のからだを離して、また、微笑んだ。やさしい笑顔だ。彼がまだ元気だったときによく見せてくれた私をいたわるような笑顔だった。私は彼の両手をつかんで、離さなかった。 「僕はこっちで生まれ変わる準備をしているんだよ」彼は言った。 「今度はルート66沿いに生まれるんだ。仕事をして、もっと勇気を持って生きる。今度は、家族をつくるよ。子供を作って本当の愛情を生きることにしたんだ」 彼は心底、うれしそうだった。次の人生をとても楽しみにしているのが、よくわかった。 「よかったね」私は言った。それから、彼はこうも言った。 「君は、僕を追い詰めてしまったと、ずっと自分を責めていたよね。でも、それは生まれる前に二人で約束したことだったんだよ。君が僕を追い詰めて、僕が早く肉体を離れるように助ける約束をしていたんだよ。だから、自分を責めなくていい。君は僕のためにやったんだから」 涙があふれた。私が彼を追い詰めたと、本当に自分を責めていた。何ヶ月もずっと、私は自分を許せなかった。彼に謝りたかった。私がした数々のこと。愛情深く看病してあげられなかったこと。病人だとわかっているのに、いらいらして彼につらく当たったこと。最後には、別れを切り出したこと。そのすべてが、彼を死に追い込んだのだと、本気で自分を責めていた。 それが、ゆるされた。 彼は、ゆるしてくれたのだった。 私は彼の手をつかんだまま、泣き続けた。彼は私に手をとられたまま、じっとしていた。彼からは、慈悲のエネルギーが伝わってきた。それは、神のように仏のように私を愛してくれているというエネルギーだった。穏やかで,肉体の愛や欲をともなわないエネルギーだった。 彼はもう、とうに肉体を離れている。そして、とうに私を手放しているのだ。 「もう、本当に別れなくてはいけない」 私は心のなかではっきりと悟った。 いやでも、もっと、彼にしがみついていたくても、彼のために、彼を行かせなければならないのだ。涙が流れた。いやだ、いやだ、ともうひとりの自分が叫んでいる。私はイメージのなかで、きつく、きつく、彼の手をつかんでいた。(つづく)
--------------------------------------------- セドナの旅がゴールデンウィークに催行されます。 詳細はこちら↓ http://www.ubatech.com/inner_trip/03-1.htm
February 02 光のなかへ~セドナの旅 9私たちは、岩の上にあおむけになって目を閉じた。 「深呼吸をして。深く息を吸って、深く息を吐いて。足の先から頭の先まで、リラックスして、力を抜いて」 ラヘリオの静かな声がした。言われたとおり、大きく深呼吸をする。からだの隅々まで力を抜いて、リラックスしてみる。すると、笛の音が聞こえ始めた。笛の音はとても懐かしい感じがする。心の傷ついたところに沁み入って涙が出そうだ。 それから、太鼓の音が聞こえた。からだが震えてぐいぐい持ち上げられるような感じがする。ラヘリオの歌が始まる。空へ、山へ、遠くへと、風のように届く歌声。それが、だんだん私のからだを取り巻いて、ふんわり抱きしめ、やさしく撫でてくれるような感じがする。 今度はタンバリンの音が聞こえた。突然、インディアンが戦っている場面がまぶたの裏に映し出された。女たちが赤ん坊を守っている場面。男たちが戦っている場面が浮かぶ。 音が止んで、ラヘリオの声がした。 「リラックスして。全身の力を抜いて」 だんだん、からだが鉛のように重くなってくる。手足がなぜだか、ひくひく動く。私は、ヒプノセラピー(催眠療法)のセッションで、こういう風になったことを思い出した。顕在意識を半分だけ横へやって、潜在意識の深いところにアクセスするときには、いつでもこんな感じになる。だから、私にとっては、潜在意識に順調にアクセスしているというサインでもある。ラヘリオの誘導にしたがって、どんどん深いところまで下りて行っているような感じがする。すると、ラヘリオが言った。 「さあ、今、みなさんは赤い土の上を歩いています」 その瞬間、イメージのなかで、私は赤い土の上を歩いていた。セドナの大地だ。「歩いていくと、動物が出てきます。それをよく見ておくように」ラヘリオが言う。すると、リスが一匹出てきた。それから、青い鳥も。 青い鳥は、実際、その日の朝、ボイントンキャニオンに行ったときに3羽も見ていた。私は、ヒロさんが、青い鳥をこんなに見るのは珍しいと言っていたことを思い出した。 「さあ、ゆっくり歩いて行って。歩いて行くと、その先に洞窟があります。そこへ入っていくと、会いたい人に会えます」 誘導の通りにイメージして行った。私は洞窟にたどりつき、そのなかに入った。すると、洞窟の奥はぼんやりと明るくなっていて、そこに亡くなった夫が座っていたのだった。(つづく)
------------------------------------------------ セドナの旅がゴールデンウィークに催行されます。詳しくはこちら↓ http://www.ubatech.com/inner_trip/03-1.htm
February 01 光のなかへ~セドナの旅 8ネイティブアメリカンのシャーマンに会ったのは初めてだった。 つやつやとした長い髪。深い微笑み。瞳の奥に吸い込まれそうになる。 その人は、「ラヘリオ」と言った。ネイティブアメリカンに古くから伝わるサウンド・ヒーリングをしてくれると言う。「音の癒し?彼が音楽を奏でてくれて、心が安らかになるということ?」そんな風に思っていたけれど、実際には何が起こるのか、さっぱりわからなかった。 「どんなことが起こるの?」とガイドのヒロさんに尋ねても、「まあ、体験してみてよ」と彼は笑って言うだけだ。細かい説明やら溢れる情報やらに慣れている私には、最初それがどうにも心もとなかった。ところが、ヒロさんと一緒に旅をしているうちに、「なるほど、これは、ひとり、ひとりが全く違うことを経験する潜在意識の旅なのだから、私たちに事前に情報を与えすぎないようにしているんだな」と思い当たった。 なにしろ、常識や既成概念ではとても説明がつかない旅だ。だから、もう、あれこれ考えずに、「何が起こるかわからないけど、とにかく起こることに身をゆだねてみよう」と覚悟を決めるしかないのだった。 時刻は午後の2時ぐらいだった。私たちはラヘリオの車に乗り、パワースポットへと向かった。みっちゃんが、ラヘリオの使う楽器を預かり、そっと膝に載せていた。楽器は笛、太鼓、タンバリン、そして、チベタンベル。ラヘリオは、サウンド・ヒーリングをするのに最もいい場所を探そうと、直感にしたがって運転しているようだった。そして、たどりついたのは、レッドロックと言われる岩山だった。 「ここがいい」ラヘリオは満足したように言って車を降りた。ラヘリオのうしろについて歩いていくと、すぐ谷に出た。谷は、細長く、傾斜が急で、大きな段差がいくつもあり、まるで川底のようになっていた。 「今は乾燥しているから水はないけれど、ここは、雨が降ると滝になるんだよ」ラヘリオが私たちに説明してくれる。私たちは、大きな滝壷の下に立っていた。見上げると、上から下へ向かって、ものすごい勢いで水が流れる様子が想像できた。滝壷の上の岩盤は、ちょうど3人があおむけて寝ることができるくらいの広さになっている。ラヘリオは岩盤の上に私たちを導き、自然のエネルギーについて説明してくれた。 「まず、空がある」ラヘリオは空を仰いだ。 「空は男性エネルギー。私たちの父なる空。そして、太陽も男性エネルギーだ。私たちを照らし、導いてくれる」 次に、ラヘリオは地を見つめた。「大地は女性エネルギーだ。私たちの母なる大地」 「そして、月も女性エネルギー。だから、女性のからだにはムーンサイクルがある。水も女性エネルギー。私たちを養い、育んでくれる」 「まず、太陽の男性エネルギーが水の女性エネルギーを射す。そこで、男性エネルギーと女性エネルギーが合一し、生命が生まれる。それから、水蒸気が空に上がり、雲を作り、雨を降らし、生命を育んでくれる」 「山は男性エネルギーで、谷は女性エネルギーだ。だから、山に登ると力強いエネルギーに満たされるし、谷では優しいエネルギーに癒される。男性エネルギーは陽、女性エネルギーは陰。それでバランスが取れている。これが、陰陽です」 ラヘリオの優しい声が谷に響いた。 「水も谷も、女性エネルギーなのか」私はタオの思想を思い出した。タオでは水も谷も母である。 それに、なぜ、温泉で癒されのかというのも腑に落ちた。温泉はたいてい山間の谷にある。そびえる山は偉大なる父のエネルギーであり、谷と、温泉と、もくもく上がる湯煙は、優しい母のエネルギーだ。きっと、あの気持ちよさは、父親に守られ、母の胎内に抱かれている安心感なのだ。そう思った。 「さて、これから、みなさんをある旅に導いて行きます」ラヘリオが言った。そして、私たちは感謝の祈りをした。 「父なる空よ、母なる大地よ。いつも私たちを愛し、導いてくださることに感謝します。どうかこの旅が愛と光のものとなるように私たちを導きますように」 祈りが終わり、目を開けると、ラヘリオが微笑んだ。「リラックスして、起こることに身をまかせて。さあ、旅を始めましょう」 (つづく)
------------------------------------------------ セドナの旅って、なに?詳細はこちら↓ http://www.ubatech.com/inner_trip/03-1.htm
January 17 ジュニパーが笑った~セドナの旅 7ボイントン・キャニオンの終点に着いたときには、空がいっそう深く青く、白い飛行機雲が何度も現れては消えた。ヒロさんも、みっちゃんも、私も、リュックを下ろし、赤い岩肌に寝転んで、しばらく、じっと空を見つめていた。 すると、渓谷を挟んで立つ二つの岩山から、声が聞こえたような気がした。 「あの子はもう安心」 「安心だね」 「でも、もっと心配しないようにならないとね」 「そうだね、未来や過去のことを考えるのは意味がない」 まるで、娘を思う母と父の会話のようだった。あるいは、それが女性エネルギーと男性エネルギーからのメッセージだったのかもしれない。私は優しい気持ちに包まれ、ふんわりとした愛情に満たされていた。 どれぐらい、そこにいただろう。なぜだか、私たちは、優しいエネルギーに包まれてぞれぞれの父や母の話をした。そうして、「もう、十分だな」と誰もが思った頃、リュックを背負い、岩山に感謝を捧げて、来た道を戻ったのだった。 帰り道、スピリットのいる場所は静かだった。ただ、道の両脇に生えていた低木たちが、私に向かって温かい笑顔を送ってくれているような気がした。 「あの子は、もう大丈夫」 「大丈夫」 「いっぱい助けたから」 「そうそう」 「いっぱい笑わせたし」 「そうそう」 「大丈夫」 「大丈夫」 彼らは口々にそう言い合って私を愛で包んでくれ、私は彼らに感謝を送った。 スピリットに、岩山に、空に、雲に、太陽に、そして、笑わせてくれたジュニパーに! 私は心からの感謝を送ったのだった。
☆ゴールデンウィークに、「セドナの旅」が催行されます! くわしくは、こちら↓ http://www.ubatech.com/inner_trip/03-1.htm
January 15 ジュニパーが笑った~セドナの旅 6「おかえり!」 なんと、目の前に声が現れたのだった! 「うわ!」 驚いて声が来た方を見ると、そこにはジュニパーの木が1本立っていた。ジュニパーの木が、まるでチェシャ猫のように、にんまりと大きな笑顔で笑っていたのだ! そんなことがあるのか?私にはわからない。でも、たしかに声が聞こえたし、たしかに空中に浮かぶ笑顔を見たような気がした。 「やだ~!!」 そう言ったとたん、笑いがこみ上げた。笑い始めると、身をよじるほど可笑しい。私は、お腹を抱えて笑った。とにかく、笑いが止まらなくなった。お腹が痛い。涙が出る。私はお腹を抱えたまま、よたよたと歩いた。 「ねえ、ねえ、ジュニパーが・・・」 「どうした?」 後ろからヒロさんが言った。「あは、あは、あは、あの、あのね、ジュニパーが、ジュニパーがね、『おかえり!』って言って、笑った!」 「ええっ?」 「あの、あの、あの、チェシャ猫みたいな顔が、ぶわって出てきて、『おかえり!』って言って、笑った!」 必死に私が説明すると、みっちゃんもヒロさんも、お腹を抱えて笑い始めた。三人とも、ひくひく言って声が出ない。 しばらく、お腹を抱えながら歩いていたが、いよいよ、お腹が痛くなったので、私はみっちゃんの後ろに回った。 すると、今度はみっちゃんに、異変が現れた。 「あれえ~、なんか、足がおかしいよお~」 みっちゃんが叫んだ。 よく見ると、彼女の足取りは、あっちへよろよろ、こっちへよろよろ、まるで酔っ払いみたいになっている。 「うわあ、みちこ、千鳥足だよ。酔っ払いみたいだよ」 ヒロさんが大声で叫んだ。 「へ~、らって、ろうしようもないよ、これ」 みっちゃんは、次第にろれつが回らなくなり、私は笑いが止まらない。辛うじて正気を保っていたのは、一番後ろのヒロさんだけだった。 ところが、高い木が生い茂った森のあたりに入ると、それが、ぴたりと収まった。みっちゃんの足は正常に戻り、私の笑いは嘘のように止まった。ヒロさんは焚いていたセージの火を消し、「はあ~、おかしかった」と、ため息をついた。 おそらく、スピリットのなのだろう。スピリットが、時折やってくる旅人をからかって笑わせているのだろう。 私は、十何年ぶりにお腹が痛くなるほど笑った。涙が出るほど笑った。いたずらだとしても、スピリットには愛があった。「そんなに深刻になるなよ。笑っちゃえよ」そう言ってくれたように思えた。(つづく)
January 14 ジュニパーが笑った~セドナの旅 5スピリチュアルツアー2日目は、ボイントンキャニオンへ出かけた。 セドナでは、「ボルテックス」と呼ばれる渦巻状のエネルギーが20ヶ所以上の場所から放出されている。その中でも「ボルテックス」」が特に強いと言われているのが、エアポートメサ、ベルロック、カセドラルロック、そして、ボイントンキャニオンの4ヶ所だ。 「ボルテックス」には、男性エネルギーと女性エネルギーがある。男性エネルギーが出ている場所では力強さを感じるし、女性エネルギーが出ている場所では優しさを感じる。ボイントンキャニオンは、男性エネルギーと女性エネルギーの両方を持つと言われている場所だった。 朝食を終え、ヒロさんの運転する車でボイントンキャニオンの入り口へと向かった。その日も快晴。朝晩は冷えるけれど、日中は少し歩くと汗ばむ。 例によって、山の入り口で浄化してもらう。聖山の入り口に必ず生えているジュニパーの木から葉をちぎって手のひらで揉み、身体にふりかける。それから、ヒロさんがインディアンにもらったウコンの根を削ってくれる。これも、よく揉んで身体にふりかける。そして、最後にスマッジと呼ばれるセージの葉を束にしたものに火をつけ、身体中に煙をふりかけてもらう。これで完了。 儀式を済ませて、山へ入った。ボルテックスの場所まで、片道1時間半のトレッキングだ。空の青がまろやかで深い。遠くに見える赤茶色の山の頂。低木の茂る緑の草原。草原の向こうには、背の高い木が生い茂る濃緑の森が見える。歩いていくのは赤い岩肌の上。所々に、黒い苔が生えている。 「踏まないでね。苔が死んじゃうから」 ヒロさんから注意を受ける。それから、ヒロさんは真面目な顔をして、 「あ、それから、ここさ、スピリットがいるから気をつけてね」と、言ったのだった。 「え?気をつけるって?それって、妖精?」 「なんだろ。とにかく空気が違うから、わかるよ」 妖精だったら楽しいな。妖精だったら見てみたい。そんなことを思いながら、木々の様子、石に生えている苔、小さな草花に目を留めながら、意気揚々と歩いていった。すると、ゆるやかな上り坂が少し急になり、低木と高い木が混じって生え始めたあたりで、ヒロさんがセージを焚き始めた。 セージの香りが漂ってくる。いい香りだ。ヒロさんが、足を止めて振り向いた。 「このへんから、いるから。ここから、先頭を歩いてごらん」 言われるままに先頭を歩き始めた。私、みっちゃん、ヒロさんの順。何も感じない。何も起こらない。私には何も見えないのかな、と思い始めたとき、みっちゃんが叫んだ。 「うわ~、身体が重いよ~。足が動かな~い」 「だろ?重いよね」と、ヒロさん。 「え~、私、何にも感じないよ。私は平気だなあ」 ところが、そのとき、信じられないことが起こったのだった。(つづく)
December 15 幸福な変化~セドナの旅 その4セドナにはリーディングをする人たちがたくさんいる。町の中心を走る通り沿いには、クリスタルショップやニューエイジショップが並んでいて、そこに必ずと言っていいほど、「Reading」という看板がある。 リーディングとは、「読む」ということ。過去を読む。現在を読む。未来を読む。どうやって読むのか、私にもわからない。彼らは読むというより、私たちが通常は感じないレベルのかすかなエネルギーを感じるんじゃないかと思う。たとえば、私たちにも直感とか、第六感というものがある。理由はないのに、「ふと、そんな気がする」ということはよくある。それを、極めた人たちとも言える。私たちの周りに取り巻くエネルギーの微細なエネルギーの波みたいなものをキャッチできる人たち。量子物理学の研究がもっと進めば、リーディングの謎も解明されるかもしれない。 でも、大切なのは、「どうやって?」ではなく、「その仕組みがどうであれ、それを受けたあとには心が癒される」ということ。それと、「誰に」やってもらうかということ。直感的にこの人ならと思うことが大切だし、自分がリラックスしていることが大切。それは、セラピストを選ぶときのポイントと同じだと思う。 彼らがいくら微細なエネルギーを感じることができると言っても、それは「こちらが出している分だけ」感じるということだから、こちらが心を閉じて「見せないぞ」と頑張っていれば彼らも読むことはできない。彼らは昔SFにあった人の心を読める人たちとは違うから、こちらが隠していることまで見てしまうなんてことはできないと思う。その代わり、こちらが心を開いて感情(感情=エネルギー)を出せば出すほど、彼らはそれを見て、整理して、私たちが自分で道を探せるようにしてくれる。あくまでも、彼らは私たちを見守ってくれる道案内人。道を歩いていくのは私たちだ。 では、私が出会ったリーディングはどうだったか、と言えば、それは深く深く、私がまるで意識していない心の奥まで届いた。心の奥の暗闇に光が差したという表現はよくあるけれども、まさに、このことか、という感じだった。リーディングは、ホテルの部屋で行われた。ツアーの人数が多い時には全員一緒にリーディングを受けるのだけれど、今回は二人しかいないので、一人ずつ受けられることになり、私は一人で部屋で待機していた。そこへ、「こんにちは」と現れたのが、セドナでただひとり、日本語でリーディングを受けられるというカビータだった。 「こんにちは」会ったとたんに、笑顔になった。彼女は大きくてふくよかで、笑顔が素敵でお母さんのような印象。ショッキングピンクのセーターに同じ色のフリースを重ね着して、おかっぱ頭で、よく見ると、瞳は少女のような輝き方をしていた。カビータはイギリス生まれ。若い頃、インドなどに住んでいて、京都に20年住んだこともある。京都では大学でも教えていた、とパンフレットに書いてあった。 私は、去年、イギリスに行ったことなどを話した。「イギリスには何をしに?」「アロマテラピーを習いに」「そうですか」部屋に入り、ドアを閉め、テーブルに座るとカビータが言った。流暢な日本語。とても、ゆっくりでやさしくて、声を聞いているだけで、なんだか、何もかも打ち明けてしまいたくなる。ところが、「さて、何を聞きたいですか?」と言われてとっさに出たのが、「仕事のこと」という言葉だった。本当は、主人のことを聞きたかったのだ。けれども、まだ、心を開く準備ができていなかった。 「仕事のこと?ああ、それはアロマテラピストをやるということ?」「いいえ、それは、仕事にはしないんですけど・・・それは、あの、主人のためにやってあげたいなと思って習いに行ったので・・・仕事を、これからどんな仕事をしていったらいいかと思って・・・」カビータは、なんとなく不思議そうな顔をして聞いている。私が核心にたどり着かないもどかしさを、彼女も感じているようだった。私は覚悟を決めた。時間は限られている。本当に聞きたいことを聞くべきだ。 「えっと、あの。主人は実は亡くなったんですけど」そのあと、何をどう喋ったのか、覚えていない。彼の病気のことや死のこと、私がどんなに苦しかったかということ、罪悪感が心の中に重く沈んでいて、どうやって生きて行っていいのかわからないことなどを、とにかく本当に吐き出すようにして一気にしゃべった。カビータは黙って聞いていた。静かに、まるで私から吐き出される感情を映像として見ているみたいに、そこに座っていた。そして、私が話し終えると、彼女は一言こう言った。 「それは、あなたのせいじゃない」 涙が一気に溢れた。心の中の傷を温かい手で撫でられたような気がした。「あなたは、もうわかっていると思います。それは、あなたのせいじゃない」もう一度、カビータが言った。私はただ頷きながら、涙を流した。それから、カビータは言った。「でも、もう手放す準備はできています。いつ、ご主人お亡くなりになりましたか?」「4ヶ月前です」「そう。それは、早いですね。たいていの人はもっと長くかかります」私は、今朝、エアポートメサで「手放しなさい」というメッセージを聞いたことを話した。 「そうでしょう?」とカビータは笑った。「あなたがご主人と結婚したのも、意味があった。あなたは、ご主人と結婚して学んだことがたくさんありましたね。ご主人も同じです。ご主人もあなたと結婚して学んだことがたくさんあります」「私は、本当の愛とは何かを学びました」私は言った。「彼とは13年、一緒にいました。その間、彼のことが心配で、過保護にし過ぎて、束縛しすぎました。私たちはお互いにそうだったんです。心配だ、心配だってお互いに相手をがんじがらめにしていました。でも、過保護にすることが本当の愛じゃない。本当の愛というのは、相手を信頼して、離れたところから相手を見守ることだということに、彼が亡くなってから気づきました」「そう。そのためには、13年一緒にいる必要があったのです」カビータはそう言って、ふう~と深呼吸をした。 「彼は肉体を去りました。だから、これからあなたができることは祈ることです。祈るとき、彼に愛を送ってください。亡くなったときの彼のことを思い出すとつらいでしょう?思い出したら愛を送ってください。そして、自分にも愛を送ってください。彼が亡くなった時、あなたはショックを受けたでしょう?だから、過去の自分にも愛を送ってあげてください。そして、ふう~と流すのです。彼のことも、自分のこともすべてを許して、流すのです」 ふう~。すると、心がゆっくり溶けていった。彼が突然この世を去ったことを「あなたのせいじゃない」と言ってくれる人はたくさんいた。でも、本当に心から「私のせいじゃなかった」と思えたのは、これが初めてだった。私は心ゆくまで泣いた。苦しかっただろう過去の彼と、傷ついた過去の私のために泣いた。そして、私の中に降り積もっていた数々の感情を流した。 「さあ、カードを切って」カビータが言った。カビータはアイルランドのタロットカードを目の前に差し出した。私はカードを切って並べた。「2枚ひいて」カードを引くと、1枚目は、毛虫の絵だった。背景に山と月。毛虫は楽しそうに笑っている。毛虫の下には赤いきのこ。2枚目は、鹿だった。それも背景は山。野原に楽しげな白い鹿がいる。「ああ」カビータが納得したように言った。 「毛虫のカードは、Blissful Change、幸福な変化。あなたは、脱皮してこれから蝶になるんですよ」カビータが私の顔を覗き込んだ。「ええ?蝶になるんですか。うれしい」「そう。今までは毛虫だったでしょう?でも、これからは蝶になって自由に羽ばたいて行くんですよ」カビータは、それから2枚目のカードを指してこう言った。「鹿のカードは、Lure of the Wilds、荒野の魅力。これからあなたは、未知の世界へ出て行くんですね。冒険です。楽しみですね」「未知の世界に冒険ですか。ああ、いいなあ。そういう風に生きたかったんです」「そうですか。よかったですね。これから、楽しいこと、たくさんありますよ」カビータは嬉しそうに笑うと、最後に私にこう言った。 「だんなさん、ここに来てましたよ。ごめんねって言ってました。でも、ここに来て、あなたと一緒に話を聞いて、本当の愛とはどんなものかが、よくわかったって。そう言って、うれしそうに後ろを向いて歩いて行きましたよ」 「そうですか、よかった。彼がうれしそうで、本当によかった」私は思わず両手を合わせてカビータに感謝した。「ありがとう、カビータ」別れ際にカビータとしっかり抱き合った。そのときカビータから感じたのは、愛そのもののエネルギーだった。 December 14 恐怖という幻想~セドナの旅 その3ベル・ロックで私を待っていたのは、「恐怖のレッスン」だった。 ベル・ロックは鐘の形をした大きな岩山。途中、ところどころに平らなところがあるほかは、ほとんど急勾配の岩壁か、小さな石ころが足元を転げ落ちていくような細い道。遠くから見ると美しい。しかし、近づいてみると、とても厳しいエネルギーを感じる。「パワフルな男性エネルギーのボルテックス 浄化作用があり精神・肉体・メンタルのヒーリングに良いと言われています」と旅のしおりに書いてある。「なるほど、この厳しい感じが男性エネルギーなのか」と思う。 ベル・ロックでも入り口でジュニパー、ウコン、セージでお清めをしてもらい、ヒロさん、私、みっちゃんの順で岩山を登り始めた。登ると言ってもトレイルはあるような、ないような。岩の窪みを見つけて足を駆け、時には両手で岩にしがみついて身体を引き上げる。一歩、一歩。滑らないように、落ちないように必死だ。みっちゃんは、軽々と登ってくる。慣れているらしく、とても要領がいい。私は底が平らなシューズを履いてきてしまったので、滑りやすくなかなか登れない。 しばらく登ると、平らなところに着いた。空気がおいしい。空が青い。はるか向こうに地平線を囲むようにしてそびえる山々。点々と見える麓の町。低木が生える赤茶色のブッシュ。息を弾ませたまま、無言で見とれた。なんだろう。とろけるような感じ。いとしいものを見るような気持ち。 「ここから、急になるから気をつけて」ヒロさんの先導でさらに登った。足を地面につけ、上半身の体重を駆けながら登る。それでも、足が滑る。山の表面は滑らかだ。その上に、細かい砂や石が載っている。足の載せ方を間違えると、そのまま滑る。下へ落ちる。 「うわ、こわいよお」思わず声を挙げた。足が滑って石が下へ落ちた。 「怖かったら下にいてもいいよ。無理しないで」 ヒロさんが上から声をかけてくれた。しかし、ここで、逃げるわけにはいかない。「よし」気を取り直して再度、足をかける。岩肌から生えるブッシュの枝をつかみ、身体を上へ持ち上げる。岩壁を横へ伝うトレイルは、わずか20センチぐらいしかない。岩にへばりつくようにして、下を見ないで進む。でも、足がすくむ。やっぱり怖い。恐怖を飲み込むようにして進む。怖いぞ、怖いぞ。でも、これを乗り越えないと新しい景色が見えないぞ。自分に声をかけながら進んだ。 「着いたよ」顔を上げると、平らな場所にヒロさんが立っていた。先ほど休憩した場所はずっと下に、登り始めた地点は遥か下に見えた。 「うわあ、こんなに登ってきたんだ」「すごいねえ」二人で声を挙げた。雲がさらに近くなっている。風が気持ちいい。深呼吸する。怖かったけど、登ってよかった。ところが、ここが終点かと思っていると、ヒロさんがこう言った。 「ツアーで来る場合、ここが終点なんだけど、どうする?行きたければ、この上にも行ける。そこが僕が君たちを連れて行ける本当の終点」彼はさらに上を指差した。 見上げると、ほとんど垂直に見える岩壁の上に少し平らになっている場所があった。低木が一本だけ生えている。その上は、本当にベルのてっぺんだ。 「どうする?」 「どうするって、ほとんど垂直、だよね」私が息を呑むと、「登れるの?」とみっちゃんが尋ねた。 「登れるよ。ただし、止まっちゃだめ。止まらずに、前のめりになって、たたたたた、と一気に上る。止まったら滑って、もう前へ進めなくなるからね」 「ええっ?」 「でも、あそこに登ったら、もっといいものが見れる。登った人にしか、見れないもの」 「どうする?」私はみっちゃんの顔をうかがった。すると、みっちゃんは、きっぱりこう言ったのだった。 「ここまで来たら、行くっきゃないでしょ」 「よし!」そう言うと、ヒロさんは、あっという間に前傾姿勢になって岩肌を駆け上って行った。 「止まっちゃだめだよ」上に着いてから、もう一度ヒロさんが言った。 私は岩肌を見上げた。ああ、できそうもない。ヒロさんみたいに脚力ないし、途中で滑って落ちるのが関の山だ。「ここまで登ったんだから、もういいんじゃないの?」心の中に臆病風がびゅうびゅう吹く。「でも、それじゃ、先には進めないぞ」今度は勇気が私を前に進ませようとする。よし、こうなったら覚悟を決めて行くか。私も、一気に前傾姿勢になって岩肌を駆け上った。 と、そのときだった。「うわ~!」私は必死で足を踏ん張り、岩肌にしがみついた。靴が脱げる!右足の靴が脱げ、つま先に辛うじてぶら下がっている。「どうする?靴を捨てるか。でも、靴下じゃ滑って登れない。どうする、どうする?」パニックになった。じりじりと踏ん張っている左足が下へ滑っていく。「うわ~!落ちる!」必死で岩肌にしがみついた。左足を踏ん張って、下に落ちそうになるのを耐える。「ヒロさん!靴が脱げた!」その間、みっちゃんは、たたたたた、と身軽に登って上に着いてしまっていた。 「どうした~?」ヒロさんは、のんびりとした顔をして私のところまで降りてきた。なんであんなにリラックスしてるんだ?私にはわからない。私は必死だ。このまま転落して岩に身体を打ちつけるかもしれない。どこまでも落ちて死んでしまうかもしれない。一瞬のうちに恐怖が全身を駆け巡る。身体が固まって動かない。何をどうしていいのかわからない。 「ほら、立って」ヒロさんが私の左足の下に自分の足を入れ、そこを基点に私を立たそうとしてくれた。私の左腕を引っ張り上げ、岩にへばりついている私を引き剥がそうとする。 「ほら、こっちへ向かって起きて」ヒロさんが言う。でも、起き上がれない。右足に靴がひっかかっていて、足の裏がちゃんと岩につかない。「立てない!靴履かないと立てない!」ほとんど泣きべそをかいている。 「しょうがねえな」と、ヒロさんが言ったかどうかは覚えていない。でも、そういう雰囲気だったような気がする。迷惑をかけてるな、と思う。申し訳ないな、とも思う。でも、こっちは必死なので、とにかくこのどうしようもない恐怖から救ってほしくて、しがみついてしまう。ヒロさんが靴を履かせてくれたのか、それとも、自分で右足に靴を履かせたのか。それさえも覚えていない。とにかく、ヒロさんがその絶壁のような岩の上に平気な顔をして、しかも余裕の笑顔を浮かべて、「こいつ、おもしれえなあ」という顔をして立っているのが(そう思っていたかどうかは、わからないけれど)、心底不思議だった。 それから、靴を履いて、ヒロさんに引っ張られながら山を登った。泣いてはいなかったけれど、恐怖が消えず、泣きべそ状態だった。 「ほら、もう大丈夫だよ」平らなところへ上がったとたん、へたりこんだ。腰が抜けそうだった。本当に怖かった。「だいじょうぶ~?」みっちゃんが心配してくれた。「靴がねえ、脱げちゃったんだよお」私はまた、泣きべそになる。「脱げちゃったんじゃなくて、脱げそうだったの。脱げてなかったよ」と、ヒロさんが突っ込んだ。 「ほら、でもとにかく、ここまで登った。見てみなよ」 それは、本当にすばらしい景色だった。青い空と白い雲。その下には赤い岩山が連なっていた。町が銀色に光っていた。赤茶色の土の上に緑がちらばり、白い道路がうねり、西にも東にも赤い岩山が点在していた。神の視座にいるようだった。私たちは、黙って景色を見ていた。言葉がなかった。その美しさには、感動も加わっていた。自分がここまで登ってきたということ。もちろん、人の手を借りてだけれども、恐怖に立ちすくんであの場にいたら見ることができなかった景色を今こうして見ているということ。その感動が自分の胸から湧いて、空に雲に風に広がっていくようだった。 どのくらい、そこに座っていたのだろう。3人でいろいろな話をした。 下りは、嘘のように楽だった。足の裏を岩肌に吸い付けるようにして、斜め下に横飛びするようにして下りる。バランスを取りながら、あんなに怖がっていた岩壁も、2、3分で降りてしまった。それから、元来た道を戻った。道と言っても道ではない。正確には岩のくぼみ、もしくは、岩のへり。足場を探しながら、ヒロさんが降りて行く。そのあとを、私とみっちゃんが降りて行く。そうして、あっという間に下まで降りてしまった。 「ほら、あんなに高いところにいたんだよ」見上げると、本当に遥か遠くに私たちが座っていたところが見えた。 「帰りは怖くなかった。最初に、怖いって尻込みしてたところなんか、下りるときに、なんでこんなとこ怖がってたんだろうって思った」と私は言った。泣きべそをかいていた私は、すっかりどこへ消えてしまっていた。 「怖いことを怖がっちゃいけないんだよ」ヒロさんが言った。本当だ。私たちはどれだけ自分で作った恐怖にやられちゃってるんだろう。「怖いと思ったことも過ぎてしまえば嘘みたいだろう?自分で作った限界を超えれば、もっともっと世界が広がるんだよ」私はヒロさんの言葉を深く胸に刻み込んだ。 December 13 流れる~セドナの旅 その2エアポートメサから戻って朝食を済ませると、聖十字架礼拝堂(ホーリークロス)へ向かった。 ホーリークロスは岩山の上に立てられた教会。中に入ると神聖な気持ちになる。蝋燭に火を灯して目を閉じて座っていると、虹のように7色の光が私の足元から身体に入って頭のてっぺんから抜けていき、それが円になってぐるぐる回っているイメージが浮かんだ。なんだろう。でも、気持ちがいい。それで、しばらくそのままでいた。あんまり気持ちがよくて、サングラスを置き忘れたようだった。 駐車場へ向かう途中に気がついた。カバンの中を探した。探しても見つからない。どうしよう。置き忘れたか。戻ろうか。まあ、いいか。1000円だし。二人を引き止めることになるから、それも悪いし。 迷っているうちに駐車場へ着いてしまった。私がカバンをごそごそしていたので、みっちゃんが気がついた。「どうしたの?」「サングラス忘れちゃったみたい」「ええ?」「いい、いい、どうせ安かったから」「探したほうがいいよ」「このみちゃん、サングラス失くしちゃったんだって」みっちゃんが、ヒロさんに声をかけてくれた。「じゃあ、戻ろう」それで、ヒロさんが車を教会の前まで戻してくれた。 慌てて教会へ走った。座っていた場所のあたりを探してみたが、見当たらなかった。あきらめかけていたとき、「サングラス?」と声をかけてくれた人がいた。 「はい」 「さっき、教会の人が下の事務所に持って行ったよ」 「ありがとうございます!」 小さな階段を下りて事務所に行くと、白髪の男の人と女の人がなごやかに話をしていた。 「すみません」ドアをノックしながら、「サングラスを忘れてしまったんですけど」と言うと、白髪の男の人が振り向いた。そして、私を見ると、みるみるうちに笑顔になった。 「ああ、よかった。君だったんだね。君を探していたんだよ!」 彼は私に抱きつきそうなくらい感激した様子でサングラスを渡してくれた。 たった1000円のサングラスでも、探しに行ってよかった。私は、あの男性の笑顔を思い出して幸せな気持ちになっていた。あの、やさしさ。穏やかであたたかい感じのエネルギー。サングラスがあったことよりも、あの人の笑顔を見たことのほうが嬉しかった。まったく知らない人の笑顔を見るだけで、こんなに自分が幸せな気持ちになれるなんて。それが、とても新鮮だった。 駐車場に戻って「あったよ!」と二人に言った。「よかったね」と二人とも喜んでくれた。気づいたときに言えばよかったのだ。「サングラスをなくしたみたい」と。きっと、ただそれだけでよかった。「どうしよう。二人に迷惑をかける」とか、「どうせ安いからいいか」とか、ごちゃごちゃと考える必要なんてなかった。考えていた分だけエネルギーの流れが止まった。車をまた教会の前に戻してもらったりする手間も増えた。 あったことをそのまま伝える。すると、エネルギーは流れる。 自分で勝手に判断する。するとエネルギーは止まる。 ああ、そういうことなんだ、と、ふと思った。 これからは、あったことをそのまま伝えよう。それが、自分の心の状態ならなおさら、「私はいま、こう思っている」と素直に伝えよう。そのほうが、物事はすんなり流れるのかもしれない。自分の小さなエゴで判断せずに、ありのままを伝えたほうが物事はシンプルに流れるのかもしれない。 私は自分がとてもさらさらと素直になるのを感じた。 December 07 手放す~セドナの旅 その1そろそろ、セドナで起こったことを書こうと思う。 信じられないかもしれない。それに、同じ場所に行ったとしても誰もがその人独自の経験をするので、みんなが同じ経験をするわけじゃない。 根拠なく思うのだけれど、おそらく誰もが「そのとき準備ができている分だけ変わる」んだと思う。ゆっくりと変わっていく人もいれば、私のように急激に変わる人もいる。だから、これはあくまで私個人が体験したこととして、「世の中にはそんなこともあるのか」という感じで読んでもらえればいいなと思う。 「このみさん、こんなツアーの案内が来てるよ。行ってみたら?」 私の場合は、ヒプノセラピストのゆきこさんのこの一言からすべてが始まった。彼女のところへ行くのは2度目だった。1度目は、夫が亡くなったことの苦しみをなんと和らげたくて藁をもすがる思いで訪ねた。そして2度目は、これからどんな風に生きていったらいいのか道しるべを探すつもりで出かけて行った。そこで、彼女にパンフレットを渡されたのだった。 「あ、行く」 パンフレットを見た瞬間に言っていた。経験から、物事が動くときには急激に、しかも迷いなく動いていくことを知っていた。間違いなさそうだった。私はパンフレットを見つめた。赤く輝く岩山の写真に強く惹かれたし、「~ホピの預言~ 生命の始まりから浄化の日まで」というタイトルにも惹かれた。ホピのことは、少しだけ知っていた。戦わないインディアン。平和の人々。そして、魂の浄化。 「何かが変わるかもしれない」 予感があった。そして、それは自分で思った以上に急激で大きな変化になった。 セドナ初日の朝は、6時にホテルの部屋の前で集合だった。外は闇。気温はマイナス。冬山登山用のジャケットを着ていても寒い。そして、ツアーのメンバーは同室のみっちゃんと私の2人だけだ。集合したところで、ガイドのヒロさんが運転してくれる車でエアポートメサへ向かった。メサとは、インディアンの言葉で「台地」の意味。言葉の通り台形になっている岩山で、インディアンは昔から敵がよく見えるようにメサの上に住んでいたのだという。 メサのふもとに着くと、ヒロさんがそこに生えている木の枝を折り、「両手出して」と私たちに言った。言われるままに両手を広げて出すと、木の葉をちぎってのせてくれる。 「これはジュニパーと言ってね、聖地には必ず生えている木なんだ」 ヒバの葉によく似ている。鼻を近づけると、甘いレモンのような香りがした。それから、ヒロさんはポケットからちいさな木の実のようなものを出してナイフで削り、それも私たちの両手にのせてくれる。 「これは、インディアンからもらったウコン。手を合わせてこすって、身体にふりかけて」 両手をこするとレモンに混じってカレー粉のような香りがした。「へえ、ウコンも浄化なんだ。そういえば、肝臓に良いっていうもんね」私たちがそんなことを言い合っている間に、ヒロさんは、乾燥した葉を束ねたものにライターで火をつけ、私たちの周りをぐるりと回って全身に煙をかけてくれた。 「これは、セージ。聖地に入る前にはこうして浄化するんだよ」 ヒロさんは自分にも同じことをして、メサを登り始めた。ゴロゴロした石と岩。岩は赤く、ところどころに低木が生えている。花はほとんどない。もう、冬だからか。しばらく登ると息が切れた。みっちゃんはどんどん登って行ってしまう。暗がりのなかでやっと頂上に着くと、「うわあ」と言ったきり言葉が出なかった。 空に立っているようだった。360度見渡す限り空で、その下をぐるりと岩山のシルエットが囲んでいた。 うっすらと山の端から空が明るくなり始めていた。空を仰ぐと濃い青。それが薄い青になり、水色になり、クリーム色になって桃色に続く。そのまま座ってあぐらをかいた。冷たい風が横から吹きつけ、頬が切れてしまいそうだ。「少し降りれば、風の吹かない場所があるよ」と、ヒロさんが教えてくれた。それでも、私はてっぺんに座っていた。てっぺんに、どうしても座っていたい気持ちがした。 座って、目を閉じた。大きく深呼吸をした。身体が硬くなっているような気がしたので、首や肩を何度か回した。ゆったりと息を吸う。ゆったりと息を吐く。風の音だけが聞こえる。広い。私の周りの世界が広くて大きい。小さな小さな私が空に浮かんで、風に吹かれているようだ。私は小さい。小さくて無力だ。こんなところに生きていたら、空や大地や風や雲を神と仰ぎ、謙虚に生きるだろうなと思う。 不思議なことが起こったのは、そのときだった。 言葉が。というより、思考の矢ようなものが、一直線に私の胸に入ってきたのだった。 「やっとここまで来たね」と声は言った。 「ここまで来るのに、たくさんの人の助けがあったね」と。 その瞬間、私が生まれてからその瞬間まで出会った人たちが、いっせいに目の前に現れた。たくさんの人たちが河のようになって私の背中を押し、ここまで連れて来てくれるビジョンが見えた。母がいた。父がいた。妹たちも、亡くなった夫もいた。友人たちや先生たち。仕事で出会ったたくさんの人たち。その人たちのすべてがいたからこそ、私は今ここにいるのだった。 胸が震えた。なぜだかわからない。胸の奥から何か熱いものがこみ上げてきて、涙になった。 「感謝しなさい。あなたは感謝が足りない」 涙がどんどん溢れた。胸が痛い。涙は幾筋にもなって頬からあごへ、そして臍の前で組んだ手のひらに落ちた。 「手放しなさい」声は続いた。 「いつまでもしがみついているから苦しいんだ。彼の人生のこと。どうして死んでしまったのか。考えて彼を哀れむのはやめなさい」 「いやだ」私は心の中で答えた。 「手放しなさい」 今度は厳しく声が言った。 「いやだ。ひとりになるのはいやだ。離れるのはいやだ」 気がづくと私は必死で両手を握り締めていた。 「手放しなさい」声が答えた。 「わかっているでしょう?もっと先まで行かなくては行けないのだから。みなを率いていく使命があるのだから。手放しなさい。勇気を出して、怖がらずに」 そのとき、またビジョンが見えた。私の後ろに何千という人がいる。私はその人たちを道案内している。行く先は私だけが知っている。私がかつて行ったことがあるところ。そこへみんなを連れて行こうとしている。 そうか。前へ進まないと。 何かがわかった。うまく説明できないけれど、私がこれから行かなくてはいけない道がはっきりとわかったような気がした。私は両手をゆっくり開いた。手放したくないという気持ちを、ゆっくり空に放った。胸が痛かった。涙が止まらなかった。彼と離れるのは、それでも、まだいやだった。 「よくやった」声が聞こえた。 と、その瞬間、左の頬が温かくなった。目を閉じたままなのに、左上から白い光が照らしているように見えた。 「感謝します」 私は両手を合わせて、額につけた。 「聖なる大地。聖なる宇宙。聖なる自然に感謝します」 どこからそんな言葉が出てきたのか。私は今まで思ったこともないような言葉を心の中で言っていた。 目を開けると太陽が昇っていた。新しい光。力強い生命のエネルギー。 大きく深呼吸をした。びしょ濡れになった頬を両手で拭った。あまりの寒さに歯を合わせることができず、手も足も震えていた。「寒いね」みっちゃんと顔を見合わせて笑った。ひさしぶりに気持ちよく笑ったような気がした。 それから、夜明け前に来た道を下った。下りながら私はずっと考えていた。なんだったんだろう、あの声は。あの大量の涙はなんだったんだろう。メッセージは、とても力強くて厳しかった。有無を言わせぬ強さがあった。あれは、なんだったんだろう。 考えても、わからなかった。ただ、わかっていたことは、そのときから私は過去に囚われることをやめ、未来へ向かって歩き出したのだということだった。 |
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